FISHMANS

Discography

自分の持ってるディスクのレビューです。まぁ、ありがち。

Chappie, Don't Cry

1991. 05. Remoras VJCA-00004(廃盤。キャニオンから再発)
1stアルバム。既に書きましたが、気の抜けたソーダのようなレゲェです。
当時なんていったっけ、ひなぎくだったかなんだったか、他の地味なバンドといっしょくたにそんな風に雑誌で呼ばれていました。それほどちょい聴き地味ーですw
僕はそんなかよわさの裏に秘めた悪態を聴きつけたわけですが、実際そんなもんあるのかどうかは分かりません。
しかし最近気が付いたのですが、このアルバム、録音がすっっごくいいような。音声の生々しさがJポップとしては桁外れです。
実はミュートビートの小玉和文プロデュース。音がいいわけだ。。。
そういう意味でも名盤。

Corduroy's Mood (mLP)

1991. 11. Remoras VJCA-10001(廃盤。キャニオンから再発)
1stアルバム以上に地味な作品。初冬にリリースされてそういう雰囲気を目指したらしいです。
名曲「あの娘が眠ってる」を収録しています。僕のカーステ用ベストMD編集のトップは基本的にこの曲。

king master george

1992. 10. Remoras MRCA-10001(廃盤。キャニオンから再発)
2ndアルバム。1stとうってかわってバラエティに富んだ、というか、とにかく振幅が大きい作品。
プロデュースはニューウェイヴバンドのパール兄弟でギターを弾いていた窪田晴男。で、まぁそういう作品な訳です。どういう作品だw
ジョークのような短い曲やへんてこりんな曲を多数含むアルバム。当時の僕は、有頂天かと思いました(有頂天というバンドがいたのです。好きでしたw)。
しかし「土曜の夜」「なんてったの」「100ミリちょっとの」などの佳曲も多い、とんがった作品。

Neo Yankees' Holiday

1993. 07. Remoras MRCA-10007(廃盤。キャニオンから再発)
3rdアルバム。本当の意味でのデビュー作だとインタビューでいってました。あと「考えるのはやめた」とか。
2ndまでは試行錯誤の時期だった、といっていいでしょうか。3rdを聴いて当時の僕は、えらくシェイプアップしたなーと思いました。レアです。
佐藤伸治の曲作りは、よりストレートに飾りを削り落として必要なだけの音で表現する、生々しい手法に依るようになってきています。
結果的にFISHMANSにしか表現できないものとなりました。考えるのをやめたらこうなった、というのもすごい。
この頃から(でいいのかな?)ミキサーにZakが参加。準メンバーと言っていい人物です。

GO GO ROUND THIS WORLD! (mxEP)

1994. 02. Remoras MRCA-10010(廃盤)
ふっきれた彼等は、この時期マキシシングルを連発しています。「ロックだ!」とかいってました。勢いのある作品。

MELODY (mxEP)

1994. 06. Remoras MRCA-10016(廃盤)
マキシ連発の中での作品。音楽への愛情を高らかに歌い上げた名曲。佐藤伸治の所信表明みたいな曲といっていいのでは。

Orange

1994. 10. Remoras MRCA-10019(廃盤。キャニオンから再発)
4thアルバム。オレンジは夕焼けの色とのことです。そのことば通り、夕刻から夜にかけての雰囲気に満ちた作品。
で、ありながら、独特の緊張感というのか、なんといっていいかわかりませんが、伝えたいイメージが器を求めてはち切れそうになってる感触があります。
彼等の音楽的なポテンシャルの高まりが、肌に感じられる作品です。
しかし、この作品でギタリストが脱退。Fishmans は4人になりました。

Oh! Mountain (Edited Live)

1995. 03. Remoras MRCA-10024(廃盤。キャニオンから再発)
5thアルバム。彼等のライヴは高い評価を受けるようになってきていました。
しかしこれはライヴ盤でありながら客席の音声は全てカット、しかもスタジオで音をいじりまくりという逆転を行った作品。当時びっくりしたものでした。
内容は、初期〜中期にかけての一種のベスト盤であり、かつ初期の曲が成長した彼等によって生まれ変わっているというもの。
このアルバムをリリースした後、キーボードが脱退、、。3人。
というわけで、ファンを一縷の期待と大きな不安のまっただ中に置いたまま、自分達の音楽を追究する時期が続きます。

ナイトクルージング (EP)

1995. 11. Polydor PODH-1288
ポリドールに移籍した彼等は、自分達のスタジオを手に入れました。当時としてはちょっと画期的だったかも。
そこから届けられたのが、このシングル。
僕はこれを最初、カーラジオから聴いたのです。
それまで聴いたことのないイントロの感触、そしていつも聴いている佐藤伸治のハイトーンボイスが流れ出た、その瞬間にわかってしまった。
一部のファンのものだったこのバンドがとうとう/いきなりシーンの最先端/ど真ん中に立ったということが。
これはそういうシングル。

空中キャンプ

1996. 02. 01. Polydor POCH-1550
嫌が応にも周囲の期待は高まっているわけで。そんな中、リリースされた6thアルバム。絶対的名盤。ジャケ写もいかしてますw

Baby Blue (EP)

1996. 03. 27. Polydor PODH-1304
空中キャンプからのシングルカット2曲目。「Sunny Blue」の別バージョンが収録されてますが、アルバムのが好きですね。

SEASON (EP)

1996. 09. 26. Polydor PODH-1324
ストリングスを導入した美しい名曲。弦楽器のhonziはこの他の作品やライヴも含めて、重要なサポートメンバーです。
そしてこの作品は、次のアルバムに続きます。

LONG SEASON

1996. 10. 25. Polydor POCH-1602
1トラックアルバムと呼ばれてたっけ。7thアルバム、でいいのかな。1曲です。恐ろしいのは、これが一発録りだということ(すごすぎ!!
シングルリリースされたSEASONを音楽のインスピレーションの赴くまま35分に拡大した作品。
ここまで実験的な音楽が、あの頃、あそこまでポップなものとして鳴り響いた。あんなことはこれからもめったにないんじゃないだろうか。
というか、6thが二月、これが十月、そして8thが翌年七月なわけで、溢れる音楽を次々にパッケージ化していくテンションが記録されています。

宇宙 日本 世田谷

1997. 07. 24. Polydor POCH-1640
8thアルバム。充実しています。完成度が高い。
空中キャンプでは、冬の夜の空気のような凛とした感触がありました。LONG SEASONではポップミュージックをどこまでも拡張していくエネルギーを感じました。
そしてこの作品。僕は、ポップだと思いました。
キャンプで冬なら、このアルバムは春です。豊かで、きもちよく聴けます。
初めて聴こうという人に奨めるならこれかなあ。空中キャンプもいいけど、ちょっとコアに寄ってる気がするから。
だけど、当時の僕はちょっと足踏み?と思いました。いくとこまでいってこれからどうする?という感じを受けたアルバムです。

WALKING IN THE RHYTHM(mxEP)

1997. 10. 22. Polydor POCH-1653
タイトル曲とリミックスで構成されています。しかし、実質これは組曲です。
続けて聴くと音楽的なイメージの広がりに圧倒されます。なんか圧倒されて、どこまでこれでやっていくんだろう、と心配したりw
考えてみたら、ポップサイドの「宇宙 日本 世田谷」、コアな方向性の本作、ということなのか?
とか書いた後でひっぱりだして聴いてみたら、トータル40分近い(汗。これってほとんどアルバムです。。。

8月の現状 (Edited Live)

1998. 08. 19. Polydor POCH-1719
ライヴに手を入れて作品に、というFishmansお得意の手法、第2段。9thアルバム、なのか?
現状というタイトルは意味深です。なんというか、ポップの領域を拡張する実験的イノベーターという位置づけがなんというか、、
本来のFishmansが持っていた一種の頑さと乖離してきている感じを、当時の僕は感じていました。
Fishmansはすごいものではなくて、もっと日常的な音楽の感動を表現するバンドだったんだけどなー。とかいいたくなる圧倒的音楽が炸裂しています。
要は付いてくのがやっとだったのかなぁ。東京No.1ソウルセットとコラボレーションしたナイトクルージングも収録してます。

ゆらめき in the Air (EP)

1998. 12. 02. Polydor PODH-1450
1曲で10分以上。音の力だけで延々引っぱる曲。
ゆらめきというタイトル通り、オールをなくしたボートが流れのままに揺れていくような感じの曲調。不安定なままやるせないまま音が包み込んでいく感じ。
彼等はずっと「いわないこと」で表現することにこだわっていました。いわずに伝えようとすること。=ことばでは伝わらないこと、ことばにならない思い。
そんなFISHMANSの音楽の集大成という感じが、今となってはします。このシングルがリリースされた数カ月の後、佐藤伸治は急逝しました。

1991-1994 singles & more

1999. 03. 17. Pony Canyon PCCA-01300
メディアレモラス時代のシングル(レモラス倒産に伴い廃盤になってました)を集めた、所謂ベスト盤。
Fishmansはシングルを並べたらわかるバンドではないので、むしろどっちかというとマニア向けのベスト盤w
なお、レモラス時代の作品はキャニオンから再発されています。

98.12.28 男達の別れ (Live)

1999. 09. 29. Polydor POCH-1855/6
正真正銘、ラストライヴです。CD2枚組。
メンバー紹介が面白い。つうか、個々のメンバーは音のパーツだという表現なのかこれはw?
内容はやはり圧倒的。こんなバンドが停まってしまったことは、本当に日本の音楽にとって損失だと、、いってもしゃーないか。
このステージを最後にベーシストの脱退があって、そのことを佐藤はMCで愚痴っています。しかしファンはもはや心配してなかったと思います。
シンプルな歌に戻ろうかどうしよか、などといってったらしい彼等の音楽に、ファンはみんな期待していたと思います。

2005.04.30.追記

空中/宇宙

2005. 04. 21.
Pony Canyon PCCA-02127 / Universal UICZ-4112/3
フィッシュマンズのベストといえば前述のsingles & more、ポリドール時代のベストとしてAloha Polydorがありますが、singles〜は前述の通り、Aloha〜は移籍以降の曲だけということで、正直、個人的には好きなベスト盤はありませんでした。両方持っていれば事足りるというようなもんでもないしね。
しかし、空中/宇宙の2セットはいい感じです。

構成は、空中/宇宙ともにベスト盤1枚とレアトラック集1枚のセット。
ベスト盤のほうは、どちらもメディアレモラス時代とポリドール時代、両方からバランスよく選曲、配置されています。
特にレモラス時代からの選曲が僕の好みに合っていて個人的にうれしい。
空中の方が昼、宇宙の方は夜の感じかな。
LONG SEASONのような大曲をあえて選ばずに、全体の流れが気持ちよく繋がることを優先している感じ。カーステレオで聴くと凄く気持ちが良さそうです。

レアトラック集は、マニア向け。
空中の方は、87〜94年のシングルB面6曲、デモ、アウトトラックなどで構成。
Singles&Moreに収録されていない曲も聴けます。この頃のシングルは持ってないのが多いので、初めて聴いた曲もありました。
米国音楽のおまけCDに収録されてるBANANAMELONが収録されているのも注目でしょうか。
宇宙の方は、95〜98年のシングルB面4曲、デモ、アウトトラックなど。
ナイトクルージングやWeather Reportのデモトラックが収録されています。正規リリースよりも荒削りで感触が違いますが、すごくいい感じ。やはり名曲と思いました。
FISH IS WATCHING YOUというアウトテイクが収録されていますが、まぁ、アウトテイクという感じです(w。

以上、ほぼ同じ内容のレビューをamazonに投稿しました。
空中のほうだったと思いますが投稿直後に忘れてしまった、、。

2022.03.26.追記
なんとなくフィッシュマンズのことを考えていて、Amazonで宇宙のほうに投稿したレビューが読めなくなっていることを思い出しました。
当時、かなり痛いレビューだと思っていて最初は封印していたのですが、空中にアップした方だけでは、やはり足りないと感じて無名で宇宙にアップしました。
何時頃だったか、無名のレビューは消しますということになって消えたのでした。
消えていくのも似つかわしいレビューだし、それでいいか、と思っていたのですが、なんだか急に気が変わって、今更ながらここに置いておくことにしました。これらのレビューは同時に書き上げていて、僕から見たら双子のようなものなのです。
あの日、カーステレオから僕を叩き起こしたのは、やっぱり「あの娘が眠ってる」でした。実は今でもあの曲が鳴ると少し胸が痛みます。

佐藤伸治が逝って6年になる。
彼の死について僕は当時行きつけだったTSUTAYAで知った。
突然小さなレコメンドシートが貼られてあって、追悼とか書いてあったのだ。
なんだそりゃ、だ。
冗談か何かとしか思えなかった。
それから数ヶ月、僕は本屋に立ち寄る度に漁るように音楽雑誌を立ち読み、それが何かの間違いだったという報道ばかり探していた。
風邪をこじらせて逝ったという話を読んだ。
確かにあの年の風邪はひどくて、僕も寝込んで目覚めたら2日経っていたという体験をした。
病院ではたくさんお年寄りが死んだ。
あれからインフルエンザの予防接種が増えたのだ。
でも30代の男が風邪で死ぬなんてふざけてる。
まったく、何もかもがふざけていた。
そんなある日、カーステレオでフィッシュマンズを聴いた。
TSUTAYAであのシートを見てから、僕はぴたりと聴かなくなっていた。
そろそろ聴いてもいいのかなと感じて、久しぶりにベスト編集したMDをデッキに入れた。
音が流れ出して、僕は佐藤伸治がもうこの世にいないことを感じた。
冗談でもなんでもない。
ほんとうに、もうこの世にはいないのだ。
ほんとうにふざけてる。
そんなこと考えても何も変わらないのだ。
6年経ってようやく彼らの遺した音楽に向き合えるようになった。
Powerbookにすべてを突っ込んで無線ネットワークでコンポに送信する。
フィッシュマンズのジュークボックス状態だ。
とてつもなく気持ちがいい。
痛みは薄れ、また音楽に浸れるようになった。
そんな時にリリースされた「空中」と「宇宙」という2組のベスト&レア。
本当にいいタイミングだと思う。
これはフィッシュマンズの「記録」ではない。
むかし聴いた人と、新たに聴く人のために、フィッシュマンズをまた楽しむための編集、セレクトが行われている。
彼らが写し出した気分は、今でも僕らの中で燻り続けている。

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