知的財産推進計画2004への著作権保護期間延長反対意見
知的財産推進計画2004では、著作権を延長すると謳われています。
しかし、著作権を延長することに何かメリットはあるのでしょうか?
(1)まず、利用者にとって著作権の延長はどのような意味があるでしょうか。
著作権があるということは、その作品は「権利者が配布しなければ触れられない作品」であるということです。
過去、著作権の期間は延長され続けてきましたが、その結果、過去の作品の中には、「権利者が(利益が出ない等の理由で)配布しないので利用者が触れられない作品」が増え続けています。
著作権の延長は、「ごく一部の利益を生みやすい作品のみを保護する施策」です。
多くの利益を生みにくい作品については、権利者が死蔵することを容認してしまう施策なのだということを、今一度考え直していただきたく思います。
単純に簡単に利益が出ないからといってその作品が優れていないとは、言えません。
売れない作品の中にも、多くの優れた作品、後世に残すべき作品が存在します。
単純な著作権の延長は、そうした作品を利用者の手から遠ざけ、出版社の倉庫の中で作品が朽ち果てても良しとする、ということです。
現実に、廃盤や絶版となっている著作物は、そのまま滅失したり、入手がほとんど不可能になるケースが多く見られます。
そうした作品は、著作権という束縛がなければ、有志の利用者によって閲覧が可能になったかもしれません。
実際、入手困難な著作権切れの作品については、ネット上で有志者が再生し利用可能にしようとする活動があります。
著作権が延長すれば、そうした文化を保護する試みも後退することになります。
著作権の保護期間を延ばすほど、利用者に取ってだけでなく、文化の発展自体に取ってもマイナスです。
(2)次に、企業にとって著作権の延長はどのような意味があるでしょうか。
権利者、特に業界団体の言い分は「より長期間、著作権を行使して利益を上げることが可能になりその利益を新しい作品の提供に投資することが可能になる」と言うものでしょう。
しかし前述した通り、著作権の延長は、「ごく一部の利益を生みやすい作品のみを保護する施策」です。
その結果、著作物を販売する企業は一部の利益が出る作品の確保に注力し、新しい作品を発掘する努力をしなくなる、という意見があります。
これは、2004年7月19日付けでまとめられた欧州委員会の報告書で話し合われていることです。
この報告書は、保護期間のさらなる延長に歯止めをかけています。
企業にとっては、売れるかどうか分からない作品を探して世に問うよりも、確実に利益を生むものの確保を目指す方が、リスクが少ないかもしれません。
しかし、それはもはや利権ビジネスであり文化的活動とは呼べません。
利権ビジネスを、利用者の不利益を増やしてまで、著作権法で保護することに大きな違和感を感じます。
利益は少なくても文化的に価値がある作品を提供しようとする企業努力は廃れ、過去の遺産で利益を得ようとする企業が力を持つでしょう。
これはアメリカでディズニーが行っていることで、著作権延長は「ミッキーマウス延命法」と揶揄されています。
(1)(2)で述べたことから、著作権の保護期間延長は文化の発展に逆行した施策だと考え、反対します。