文化庁長官官房著作権課 宛
「文化審議会著作権分科会報告書(案)」に関する意見

1.〜4.(個人情報)

5.意見
2003年12月文化審議会報告書(案)に関して、第1章法制問題小委員会の、 検討の結果に記載されている、『「日本販売禁止レコード」の還流防止措置』に関しての意見です。

私は、『「日本販売禁止レコード」の還流防止措置』に関して、法制化に反対致します。

根拠)

1.逆輸入盤ではない輸入盤の輸入を制限する根拠となり得る

音楽業界の代表は、逆輸入盤ではない輸入盤に付いては輸入制限しないと言っているようだが、その発言の根拠は極めて信頼性に乏しい。
一旦、「権利」として法制化された場合、近い将来、法規に沿って輸入を制限する根拠となり得ると考える。
実際にカナダやオーストラリアでは、書籍に関してそういった輸入制限が行われている。
消費者は、規格外の不良品である一部の国内盤を購入せず、工業規格に沿った海外CD(米国の製品が多い)を購入することで自己防衛している。
音楽業界は、不良品の販売を伸ばすため、もしくは独占販売の強化のために、これら輸入盤の輸入を制限する可能性が高いと考える。
将来、輸入盤の制限がなされた場合、被害を受けるのは音楽を買っている消費者である。
聴きたくても聴けないという状況に至るからである。

2.逆輸入盤が国内盤の売り上げ低下に影響するという根拠がない

逆輸入盤が国内の音楽コンテンツの売り上げ低下に影響している、あるいは将来的に影響するというが、根拠がない。
賛成意見の中で「還流の障壁となる言語の問題がない」とのことだが、パッケージの記載や歌詞は外国語で書かれているはずで、これは言語の問題である。
また言語の問題とは関係なく、音楽ファンはより音楽家を身近に感じられる媒体を購入するものであり、逆輸入盤であるということ自体が還流の障壁である。
実際、国内ミュージシャンのファンの多くは国内盤を購入し、逆輸入盤はほとんど売れていない印象を私は持っている。
私の周囲には逆輸入盤を購入し聴いている知人はいない。皆、国内盤を買っている。
逆輸入盤を購入しているのは、むしろ今まで高価な国内盤を買う資金がなくコピーなどでがまんしていた一部のファン層であると考えられる。
こうしたファン層にとって魅力的な製品であれば、むしろ総体としての売り上げは改善し得る。

3.海賊盤の問題とは関係がなく売り上げにも貢献しない

逆輸入盤は海賊盤ではなく、法制化されれば海外から見れば輸出の障壁になるものであり、国際的な問題となる。「65ヶ国において「みなし侵害」「国内・域内消尽の頒布権」「輸入権」など著作権法により何らかの方法で還流を防止することが可能となっている」とのことだが、実際に障壁となるような運用をしている国はほとんどないはずである。
障壁の影響を受けるのは「正規にリリースされた製品」であり、所謂、著作権法規に違反して販売される海賊盤の問題とは関係がない。
国内盤より安いからという理由で、海賊盤と同等の扱いをすることは問題がある。
音楽業界の利益を保護する以外に意味がない法制化であり、しかも保護出来るという根拠もない。
むしろ、もし逆輸入盤のみならず輸入盤の輸入禁止につながるようなことがあれば音楽文化の衰退の原因となり得ると考える。
また「アジア諸国で正規品が適正価格で流通することにより、海賊版対策にもつながる」という意見は、還流防止措置とは関係がないと思われる。

4.企業倫理にもとる業界の利益を、国が保護する必要はない

著作権法規上は、複製権を持つメーカーが音楽を不良媒体に収録し、販売を独占する権利が認められているようである。
上記1.2.にも関連するが、日本の音楽業界の一部は、音楽CDの工業規格を意図的に外した再生保証もない製品を「再生の不具合に付いては関知しない」として販売している。この製品はコピーコントロールディスクと呼ばれ、実際に再生できないことや再生機器に不具合を生じることも多い。
たとえ法的には認められた権利だとしても、一般的な倫理に鑑みれば、製造販売に携わる業界として前代未聞の所行であり、その主張や発言は全く信用できないと感じている。
なお、私が見たことがある逆輸入盤はコピーコントロールディスクであり、国内の消費者が自己防衛のために逆輸入盤を購入することはない。
このような製品が多く輸出されていることは、近い将来、海外の音楽ファンの日本国の心証を著しく傷つけることになるのではと憂慮するが、これは今回の件とは関係がないことである。
このような業界を国が保護する法律を制定することは、音楽ファンである国民の一人として納得できない。


以上。