FISHMANS

Discography

彼等のデビューは、それは地味なものでした。1991年、バンドブームの最終期にひっそりという感じです。当時、彼等は気が抜けたソーダのようなレゲエを奏でていました。ちょい聴き、毒にも薬にもならないようにきこえる彼等の音楽。当時を知る人の多くは、彼等が後にあんなすごいことになるとは夢にも思ってなかった筈です。
よくよく聴いたらかすかに感じる毒気、悪態のような感触があるその音楽がなんだか気に入った僕は、ここは積極的にファンになろう、と思いました(w

彼等は地道に彼等自身の音楽を追究していったと思います。
メディアレモラスからポリドールに移籍し、メンバーの脱退にファンが不安を募らせていた頃でした。自分達のスタジオを手に入れた彼等が、評価を決定付けるシングル「ナイトクルージング」をリリースしたのは。ずっと見ていたファンは誰もが、遂に来た!と思ったのではないでしょうか。
この時から数年間、彼等は日本のポップミュージックシーンの先端に立っていました。

Vo/G/コンポーザーの佐藤伸治がこの世を去ってからもう4年が過ぎようとしています。
彼の活動を追いかけていたファンは多分、彼に「音楽に殉じた人」という印象を多少なりとも持っているんじゃないかと個人的には思っています。彼がインタビューで語ったことはいつでも中心に音楽がありました。音楽活動で遺した作品はそうしたコトバの裏付けとして十分なものでした。
ミュージシャンだから当然といえば当然ですが、他のミュージシャンと比べても特にそういう匂いを強く身にまとっていたと思います。一回だけ観ることが出来たライブでの彼は、音の海を泳ぐ魚のようでした。

現在、彼の抜けた穴を埋める音楽家はいません。
しかし僕には、彼が伝えた音楽への思いは確実に日本のポップミュージックシーンを変えたという感触があります。表層的なジャンクフードのような音楽が消費されていく一方で良質な音楽は確実に増えています。
CDは売れていない? そんなのは妄言だと思います。

1999年3月15日、享年33才。安らかに。